「サルコペニア」という言葉を最近良く耳にするようになりました。どうやら肥満と関係があるようなのですが、どういうものなのか調べてみました。
サルコペニアとは
サルコペニア(sarcopenia)はギリシャ語による造語です。サルコ(sarco)は「筋肉」、ペニア(penia)は「減少」を意味しています。日本語で言えば「筋肉の減少」。言葉の定義としては「年齢を重ねるにつれて筋肉量が次第に減少する」という事象を表わす言葉として1989年に提唱された比較的新しい概念です。
年齢を重ねれば筋肉が落ちていくことは誰でも経験されていると思います。若い頃のようには身体が動かない。昔は寝ないで働いても平気だったのにできなくなってきた。酒が弱くなった。化粧の乗りが悪い。年齢と共に筋肉の量が減っていくことは誰にでも起きることで、サルコペニア自体は誰にでも起こる自然な生理現象なのです。
例えば、プロのスポーツ選手を想像してみてください。私と同年代の野球選手にイチロー選手が居られます。彼は小学生の頃から頭角を現して走攻守全ての面で非常に髙い評価を得ているスポーツ選手です。故障をしない野球選手としても大変有名で、実際に野球選手としてはかなり高齢の部類に入る46歳まで現役の野球選手として活躍された方です。
若い頃からプロスポーツ選手として少しでも長く活躍できるように相当な努力を重ねて来られた方だと想像します。個人的にも同年代の星として大変尊敬している方ですが、そんな方でも現役生活を引退することを考えなければならない時が必ず来るわけです。
繰り返しますが、「加齢による筋肉量の低下」サルコペニア自体は病的なものを除けば誰にでも起こる自然な現象です。外国語で表記されているため物々しく感じますが、ごく当たり前のことを言っているに過ぎないのです。
肥満とは
言うまでも無いことですが、「体脂肪が普通より多く蓄積された状態」のことです。サルコペニアと違って、肥満とは、特に誰が提唱したというものでもなく、昔から広く一般的に言われている概念です。
医学的には、標準体重より体重が20%以上超過したものを肥満と呼んでいます。ボディービルダーの方など、筋肉の量が物凄く多い方でも標準体重より20%以上超過している場合もありますが、肥満であるかどうかは身体を見れば分かると思います。
例えば肥満の判定式としてBMI指数(ボディマス指数)があります。BMIの計算式には体重と身長しか出て来ませんので、ボディビルダーのような筋肉ムキムキな方でもBMI指数は高めに計算されます。「肥満」という概念に当てはまらないことは見れば明らかに分かると思いますので、そのような方はここでは除外します。
サルコペニア肥満とは
サルコペニアが原因で起きている肥満です。加齢により筋肉が落ちると、基礎代謝が落ちます。これは誰にでも起こる自然な現象ですので、抗うことは可能ですが、避けることはできません。
年齢とともに脂肪が落ちにくくなった、運動しているけれども痩せない、食事の量やバランスを考えて摂るようにしているが細くならない。このような症状の原因は加齢による「基礎代謝の低下」によるものです。
なぜサルコペニアで基礎代謝が低下するのか
筋肉に限らず、細胞の中には「ミトコンドリア」と呼ばれる器官が存在します。ミトコンドリアは細胞の中における呼吸の場として機能しています。呼吸すなわち酸素を取り込んで、炭水化物を燃焼させることにより細胞内で他の器官が利用するためのエネルギー源を産生しています。ミトコンドリアは炭水化物を酸素と結合させることによりATPを産生する作用を機能の1つとして持つ細胞内の小器官ですが、高校の生物の授業で勉強された方も多いと思います。
筋肉は、動物を動物足らしめている非常に重要な器官で、常に伸びたり縮んだり激しく動いている器官です。筋肉の細胞1つ1つが激しく伸び縮みしますので、エネルギーを大量に使います。そのエネルギー源を供給しているのが上に書いた「ミトコンドリア」です。
加齢により筋肉の量が落ちると、筋肉の細胞1つ1つが細くなりますので、ミトコンドリアの数も減ってしまいます。そうすると消費されない炭水化物が身体の中で余ってしまいます。
なぜ基礎代謝が低下すると肥満になるのか
余った炭水化物は、捨てることができない仕組みになっています。一度腸から吸収された炭水化物は余った場合は脂肪として身体の中に蓄積されます。ヒトの身体は炭水化物が不足した場合に備えて常に燃料を蓄え続ける仕組みになっています。
サルコペニア肥満を防ぐための対策
基礎代謝を低下させないことが大切です。まずは筋肉をできるだけ落とさないようにする必要があります。運動や食事で対策することも大切ですが、イチロー選手のような相当な努力を重ねた一流アスリートでもサルコペニアは必ず起こることですので、加齢による基礎代謝の低下は避けられないことです。