一人暮らしは様々なことが自分の好みに合わせて過ごせる気楽さがあります。一方で、自分が苦手なものは避けてしまいがちとなります。その特徴が色濃く出るのが「食事」でしょう。自分の好物を食べる機会が増え、苦手とする食材を食べないで過ごすことも多くなります。無理して嫌いなものを食べる必要はありませんし、好きなときに好きなものを食べても誰からも咎められません。
ですがこのような食生活が続くことで、知らないうちに栄養バランスが崩れてしまい、栄養不足に陥る心配があります。栄養不足に陥らないよう工夫が必要です。
疲れやすい人や肌や髪に艶がない人は栄養不足かも
スーパーやコンビニエンスストアに行けば、いつでも食品が購入できます。さらに日本国内で生産されている食材以外にも、今まで見たことがないような諸外国の食材が並ぶお店も少なくありません。豊富な食品が手に入る現代でも、栄養不足に陥る場合があります。
カロリーベースではしっかりと食事を摂っているという方でも、必要な栄養素が取れていないことで栄養不足に陥っている可能性があるのです。もし食事はしっかりと摂っているものの、疲れやすい方や肌や髪に艶がなくどことなく不健康に見えてしまうという人がいたら、栄養不足が起こっているかもしれません。
また健康に人一倍気を使っているという方の中にも、間違えた知識によって栄養バランスが偏り、栄養不足が起こっている可能性があります。例えば、健康に気を配り野菜中心の食生活を送っているという方の中には、たんぱく質や炭水化物が不足している食生活となってしまっているケースがあります。
最近では糖質や脂質が悪者のようにとらえられ、できるだけ食事で取り入れないように努力している方がいるかもしれません。ですが、糖質も脂質も身体には必要不可欠な栄養です。極端にセーブすることで栄養バランスが崩れ、結果として栄養不足に陥ってしまうのです。
一人暮らしの食事で不足しがちな栄養素
一人暮らしの食事で不足しがちとなりやすい栄養素として、ビタミンA、カルシウム、マグネシウム、鉄分があります。
1.骨や皮膚を作り目の健康にも関わる「ビタミンA」
美肌を維持するために必要不可欠と言われている脂溶性のビタミンの1つがビタミンAです。ビタミンAが不足すると夜間ものが見えにくくなる、肝機能が低下する、感染症にかかりやすくなるといった影響がおこります。
またビタミンAは粘膜を守る働きもあるため、のどの調子が常に悪い、胃腸が弱いといった悩みを持つ方はビタミンAが不足している可能性があるといわれています。
ビタミンAが多く含まれているのはレバーやウナギ、さらに牛乳やチーズなどの乳製品類です。ダイエットのために乳製品を控えている、動物性たんぱく質の摂取量を減らしているという方は多いでしょう。このような方はビタミンAが不足しがちです。また緑黄色野菜に含まれるβカロテン(カロテノイド)も食べるとビタミンAに変わります。これらの野菜を苦手とする方はどうしても摂取量が減りやすいのです。
健康のために脂質を制限しているという場合もビタミンAの吸収が少なく、結果的に不足してしまっている可能性もあります。ビタミンAは脂溶性ビタミンの為、脂質と共に取り入れることでより吸収しやすくなるためです。
2.神経の高ぶりを抑え骨格を作る「カルシウム」
骨を作るミネラルとして知られるカルシウムですが、イライラを静める効果や血液を固める作用、血圧の上昇を防止する作用など、その働きは多岐にわたります。身体に必要不可欠なミネラルだからこそ、普段は骨に蓄えられ、体の中で不足が起こると骨から溶け出し体に供給されます。
カルシウムは魚や乳製品、豆類に多く含まれるため、比較的日本人は多く摂取していると思いがちですが、実際のところ日本人の食生活の中では不足しがちなミネラルの1つとなっています。
昔に比べると魚介類の価格が高くなり、肉類の価格が下がってきたことも影響しています。また肉に比べて魚の方が調理に手間がかかり、バリエーションが少なく飽きてしまうと感じる人も多いでしょう。手早く食事作りをしたいという一人暮らしの方には不向きな食材となりやすいのです。魚は頭や骨、内臓などどうしても廃棄しなければならない部分も多く、ゴミを減らしたいと考えたときにも魚は避けたくなるのかもしれません。
3.良質な睡眠にもつながる「マグネシウム」
眠りが浅く、いつまでも寝入れないといった悩みがある方はマグネシウムが不足している可能性があります。マグネシウムは心をリラックスさせる効果を持つホルモンの1つ、セロトニンを生成するために必要不可欠なミネラルだからです。
朝日を浴びるとセロトニンの分泌が始まり、やがて分泌されたセロトニンを材料としてメラトニンという眠りを誘うホルモンの分泌が行われます。分泌されるセロトニンの量が少ないと、メラトニンの分泌量も減るため、睡眠の質が悪くスムーズに入眠できなくなるのです。
またマグネシウムはカルシウムの吸収にも必要なミネラルです。沢山カルシウムを摂取したとしても、マグネシウムの量が少ないと吸収されず排出されてしまいます。
マグネシウムは昔なら塩や豆腐などに豊富に含まれていました。マグネシウムは海水に含まれているため、海水を煮詰めて作る天然塩や、豆腐を固めるニガリにそのままマグネシウムが含まれていたためです。ですが、塩は海水から作られるものではなく塩化ナトリウムを主原料にするものが増え、ニガリも塩化カルシウムを代用することが増え、マグネシウムの摂取量は低下しやすくなっています。
4.体の機能を維持するために必要不可欠な「鉄分」
造血作用がある鉄分は、もともと不足しがちなミネラルと言われています。とくに女性は毎月起こる月経のため、鉄分不足に陥りやすく貧血の悩みを持つ方は多いでしょう。血液が正常に作られないと、どんなに栄養をしっかりと取り入れても身体の隅々に行き渡らせることができず、エネルギーが生み出せません。結果として冷え症にもなりやすくなります。
栄養不足の状態を減らすための手軽な3つの対策
一人暮らしの食事はできれば手間をかけずに済ませたいと考える方は多いでしょう。そこで、栄養不足の状態を減らすために無理なく簡単に行える3つの対策として、調理器具や食材の工夫、サプリメントを取り入れることも考えてみてください。
1.スキレットとグリルを使った簡単調理
コンロに付属するグリルを「魚を焼くためだけの場所」と考えている人は多いでしょう。ですが、グリルを活用することで短時間調理が可能になります。また、鉄製のスキレットを使って調理をすることで、不足しがちなミネラルの1つ鉄分の補給にもつながります。鉄製のスキレットを使った調理は、スキレットの鉄分が食材に移ってくれるためです。
人参やカボチャといったβカロテンを多く含む野菜も、スキレットとグリルを使った調理であれば、野菜の栄養が飛びにくく味わいもギュッと凝縮され甘く食べやすい味わいになります。脂溶性ビタミンであるこれらの野菜をスキレットに並べてグリルで焼いた後に、天然塩をさっと振りオリーブオイルを回しかければビタミンAの吸収が高まり、マグネシウムも摂取できるでしょう。
さらに、スキレットならそのまま食卓に持って行っても違和感がありません。いちいち洗いものも増えませんし「映え」る一品にもなります。
2.白よりちょっと茶色を意識してみる
砂糖や小麦粉、米などは精製することで色が白くなります。ですが、精製し取り除かれた部分にたくさんの栄養やミネラルが含まれています。つまり、栄養不足を予防するなら、精製される前の食材を取り入れるとよいでしょう。
ただ、栄養やミネラル分を取り除く精製を行う理由は、食材を食べやすくするためです。精製されていない食材は多少食べにくさを感じますし、見た目がキレイにならないといったデメリットがあります。栄養不足を避けるためといっても食べにくいものを食べ続けることは難しいことになります。
そこで、取り入れやすい物だけ取り入れてみてはいかがでしょうか。例えば、調理に使う砂糖は精製糖ではなく黒糖や甜菜糖を使う、塩は精製塩ではなく藻塩や天然塩を使うというちょっとしたことに使うのです。少しずつ取り入れることで、少しずつ栄養不足が減らしていけるとよいでしょう。
3.サプリも上手に活用していく
好きな食べ物を中心とした食事では、どうしても不足しがちな栄養素やミネラルが出てきます。かといって苦手なものを意識して取り入れることは一人暮らしでは難しいものです。そこで、普段食べている食事不足するものは、思い切ってサプリメントを使い補ってみてください。
もちろん、意識して食事の中で取り入れることができればよいのですが、忙しい日々の中で栄養やミネラルのことまで考えた食事をすることは大変です。不足するなら補えばよいのです。
栄養やミネラルは取るだけでは役立たない
一人暮らしではどうしても好きなものに食生活が偏り、栄養不足になりやすいことをここまで説明してきましたが、ここからは栄養は取り入れただけでは役立たないという話をしていきます。
沢山栄養を取り入れても、それが余って体にたまってしまったり、身体を通過していくだけで排泄されたりしては意味がありません。例えばカルシウムやマグネシウムをいくら摂取しても、それだけでは骨は丈夫になりません。歩いたり走ったりして骨に刺激を与えることで、骨を作る細胞が働きやすくなり、さらにカルシウムを呼び寄せ骨が作られていくことが分かっています。
また血液を十分に作り出せても、ふくらはぎの筋肉が収縮運動を行わなければ足先などに溜まってしまった老廃物を含む血液は肺に送り返せません。血液が滞ることで栄養が行き渡りにくくなるといった影響も出てきます。
一人暮らしだと、だらけたいと思えばいつまででもだらけて過ごすことができるでしょう。ですが、意識して動くことも必要です。動かないことが続くと筋肉が衰え、動けない身体になっていってしまいます。さらに関節の可動域も狭まり、柔軟性が低下していきます。動くことで体に負担がかかり、怪我をしやすくなっていく危険性があります。
年齢とともに体の機能の衰えが起こるため、30代以降の方で一人暮らしをしており、自分に甘めな生活を送りがちな方は、あっという間に機能低下が起こる危険性があります。ここは少し意識的に動くようにしましょう。
例えば普段バスで駅まで移動するなら、自転車や歩きに変えてみるとよいでしょう。最初は無理なく行える運動を生活の一部に取り入れていくとスムーズです。無理なく動けるようになったら、少し速度を上げてみたり、動く距離を長くしたりするといったように運動量を増やすと体に無理がないでしょう。
家の中のある場所を通過するときに、決まった運動を行うルールを作るのもおすすめです。例えば玄関を通過するときには必ずスクワットを10回行う、テレビを見る前には腹筋を10回行うといったようなルールを作り実践していけば、いつの間にか運動が習慣化していきます。気が付けば筋力が付き、健康的な体が手に入るかもしれません。
無理をしない範囲で行い続けられることが大切
栄養バランスが整った食事も、日常で行える何気ない運動も、1週間だけ頑張ればよいわけではありません。長く続けることが何よりも重要です。そのためには、無理や背伸びをするのではなく、ちょっとだけ頑張ってできる範囲で続けられるようにしていくことが大切です。
嫌いなものを無理して食べるといった食生活は、長く続けられないでしょう。朝忙しいことが分かっているのに30分のランニングをすることも難しいでしょう。ですが、朝出掛ける前に10回のスクワットを行っていくといったことなら、少し頑張ればできることです。最初は10回のスクワットが大変だと感じていても、続けているうちに15回できるようになったり20回できるようになったりしていきます。
ポイントは、無理ではないけどちょっと頑張る点です。ちょっと頑張ることを続ければ、気が付けば頑張らずにできるようになります。頑張らずにできるようになったと感じたら、またちょっと頑張らないとできないことにハードルを高めることで、何もしなかったときに比べると驚くほどできるようになっていきます。
不足しがちな栄養も、ちょっとずつ不足を補うよう頑張りましょう。