サルコペニア予防

サルコペニアの原因とは?

サルコペニアとは?

「サルコペニア」というのは、加齢やさまざまな疾患によって全身の筋肉量が減少している状態のことです。特に、急激に筋肉が減少し歩くのが遅くなったり、転倒して怪我をしたりするなどの特別な対処が必要な状態を指すこともあります。

65歳以上からサルコペニアになる人は増加し、さらに75歳を超えるとさらに急増する傾向にあります。世界各国で実施された調査によると、高齢者の6~12%がサルコペニアの状態にあるということが分かっています。

ちなみにサルコペニアという言葉は造語であり、筋肉を意味する「サルコ」と、減少を意味する「ペ二ア」が組み合わされています。1989年ごろに提唱されたものなので、比較的新しい概念だといえるでしょう。

サルコペニアの症状

サルコペニアの症状はさまざまですが、筋肉を使って行う活動に支障が出る、動作ができなくなる場合は幅広く当てはまります。

  • 速く歩けなくて、時間内に横断歩道を渡りきれない
  • ペットボトルのふたを自分で開けることができなくなった
  • お風呂でうまく身体を洗えない

以上のように、日常生活に関連する動作において症状が出ることが多いです。

さらに、病気や怪我の原因になるような症状もあります。

  • 歩いている時、階段を上り下りしている時に転倒する
  • 飲み物や唾液をうまく飲み込めなくなる(嚥下障害)

このような症状がある場合は命にも関わるので、特に注意が必要です。

さらに、サルコペニアの状態になることによって、糖尿病や肺炎などの病気を発症しやすくなる、死亡率が上がるといったことも考えられています。

サルコペニアの原因

加齢

サルコペニアになる原因は多岐にわたりますが、最も多いものが加齢による筋力低下だといえます。年齢を重ねるごとに筋肉のもととなるタンパク質が作られにくくなり、かつ分解されやすくもなるので、どうしても筋力は低下してしまいます。40歳以上の場合、1年で約1%の筋肉量が減っていくのです。

活動

さらに、活動をしないこと、つまり身体を動かさないことによっても筋肉量は減少します。たとえば入院中に24時間寝たままでいると、1日で約0.5%の筋肉量が減るのです。このように、筋肉を使わないことが原因で萎縮することを「廃用性筋萎縮」といいます。

疾患

また、疾患や栄養不足によって筋肉のタンパク質が分解されてしまうことも原因であると考えられています。

たとえば筋ジストロフィーや皮膚筋炎などの神経筋疾患。さらに感染症や外傷によって大きな身体的ダメージを負った場合。また、がんや心不全、呼吸不全などで脂肪組織と骨格筋が分解されることも原因とされています。

栄養不足

必要な栄養を摂取できていなかったり、点滴や経管栄養によってタンパク質が不足していたりすると、栄養不足の状態に陥ります。そして栄養不足状態が続くと筋肉のタンパク質が分解され、筋肉量は徐々に低下していくのです。

医原性

医原性とは、医療行為が原因となることを指します。たとえば薬による副作用で筋肉量が低下することが挙げられます。

さらに入院において、動いてもよい状態であるにも関わらず過度に安静にした場合や、食事ができるのに食べずに過ごした場合にもサルコペニアになる可能性があります。点滴による栄養補給がうまくできず、栄養管理が不適切だったという原因もあるでしょう。

サルコペニアの分類

サルコペニアは、その原因によって2種類に分類されています。

一次性サルコペニア/加齢性サルコペニア

一次性サルコペニアは主に加齢が原因であるものです。加齢以外に考えられる明確な原因がないことも特徴の1つとして挙げられます。高齢者でサルコペニアである人のほとんどが、一次性に当てはまるでしょう。

二次性サルコペニア/活動に関連するサルコペニア

二次性サルコペニアは、寝たきり状態や生活スタイル、無重力状態などが原因と考えられるものです。

そして二次性サルコペニアは、さらに細かく分類されています。

疾患に関連するサルコペニア

これは二次性の一種であり、心臓や肺、肝臓などにおいて重傷臓器不全がある場合、悪性腫瘍や炎症性疾患がある場合などに、不随して発症するものです。

栄養に関連するサルコペニア

こちらも二次性の一種であり、食欲不振や消化管疾患、エネルギーやタンパク質の不足などによって発症するものです。

サルコペニアに注意したほうがよい人

まず、75歳以上の高齢者は注意が必要です。なかでも、BMI18.5以下の痩せている高齢者は注意しなければいけません。

また、運動をせずに食事を減らすことでダイエットを行っている人も要注意です。運動をせず栄養が不足すると、脂肪だけではなく筋肉も減少してしまうためです。

ですが、サルコペニアは痩せている人だけに当てはまるわけではありません。メタボリックシンドロームや肥満に当てはまるが、運動を日常に行っていない場合は注意が必要です。このタイプのサルコペニアは「サルコペニア肥満」と呼ばれており、運動をしなければ足が細くなって体重の負荷に身体が耐えられなくなります。その結果転倒して怪我をする可能性が高くなるので注意してください。

このように、サルコペニアは高齢者だけに当てはまるものではありません。運動をあまりしていない場合は、若くても痩せていなくてもサルコペニア予備軍となってしまうのです。

サルコペニアのチェック方法

普段の生活を振り返る(身体機能をチェック)

まずは、普段の生活の中で動作がスムーズにできているか、筋力が落ちたと感じる場面はないかを確認しましょう。たとえば以前と同じようなスピードで歩けるかどうか、階段を問題なく上がれるかどうかなどについて振り返ってみてください。

特に、青信号のうちに横断歩道を渡りきれるかどうかが重要です。横断歩道の信号は、一般的に秒速1.0mで歩けば渡れるようになっているので、青信号のうちに渡りきれなければ身体機能の低下が疑われます。

指輪っかテスト(筋肉量をチェック)

自分で簡単にサルコペニアであるかどうかをセルフチェックする方法として、指輪っかテストがあります。

まずは両足を床につけた状態で椅子に座ってください。そして利き足ではないほうの足のふくらはぎを触り、最も太い部分を探します。なお、利き足がどちらか分からない場合は両足で行ってみてください。

そして両手の親指と人差し指を使って輪っかを作り、ふくらはぎの太い部分囲いましょう。その結果両手の指同士がくっつかなくて指で囲めない場合は、十分な筋肉量があります。よって、サルコペニアである可能性は低いでしょう。

ただし、ちょうど指同士がぴったりくっついて囲める場合は筋肉量が低下している可能性があります。さらに指同士が重なる場合は、筋肉量が低下している可能性が高いでしょう。

もちろん指の長さは人によって異なるので、指輪っかテストだけでサルコペニアであるかどうか、明確に判断することはできません。そのため、テストをしてみてぴったり囲める方や、指同士が重なる方は病院で相談することをおすすめします。特に体重が大幅に減少した場合や、少し動くだけでも疲れやすくなったと感じる場合は、早めに相談してください。

なお、もう少し正確にふくらはぎの太さを測りたい場合は、メジャーなどを使って測定してください。

自宅で暮らしている高齢者 男性:34cm未満、女性:33cm未満
入院している高齢者 男性:30cm未満、女性:29cm未満

上記に当てはまる場合は、サルコペニアを疑いましょう。

立ち上がりテスト(筋力をチェック)

さらに、椅子を使ったセルフチェックテストもあります。高さ40cm程度の椅子を用意して座り、片足を少し地面から浮かせてください。そしてそのまま椅子から立ち上がって、片足立ちを3秒間続けます。この方法で立ち上がれない場合や、立ち上がれても片足立ちを3秒間キープできない場合は筋力低下が疑われます。

AWGSの診断基準

サルコペニアは世界的に確認されている症状ですが、人種によって体格が変わるため明確な診断基準はありませんでした。しかし2014年にはAWGSというグループによって、以下のようなアジア人向けの診断基準が発表されました。

  1. 握力(両手で3回ずつ計測し、最高値で判断)男性:26kg未満、女性:18kg未満
  2. 歩行速度:秒速0.8m以下
  3. 筋肉量
    • バイオインピーダンス法による測定の場合
      男性:7.0kg/平方メートル未満、女性:5.7kg/平方メートル未満
    • 2強度X線吸収測定法による測定の場合
      男性:7.0kg/平方メートル未満、女性:5.4kg/平方メートル未満

まず握力と歩行速度を診断し、1と2に当てはまらなければサルコペニアではありません。そして1か2のどちらか、または両方に該当した場合は筋肉量の測定も行います。そして3に当てはまらなければサルコペニアではなく、当てはまった場合はサルコペニアだということになります。

サルコペニアはどのように治療する?

運動療法

サルコペニアの症状を改善するためには、筋肉量を増やすことや筋力をアップさせることが非常に重要です。そこで、治療には運動療法がよく取り入れられます。

なかでも、「レジスタンス運動」や「有酸素運動」が効果的です。レジスタンス運動というのは抵抗を加えながら行う運動のこと。自分の体重をかけることで負荷にして、筋力トレーニングをします。

たとえばスクワット運動。スクワットでは、大腿四頭筋や大臀筋を鍛えることができるので効果的です。ですがいきなりやりすぎると身体に負担がかかりすぎるので、ゆっくり少ない回数から始めてみてください。椅子などにつかまりながら行うこともおすすめです。

さらに、腕立て伏せを行うことで上腕三頭筋と体幹を鍛えることができます。腕を肩幅くらいに開いて、足はつま先立ちにしましょう。ただしつま先立ちが難しい場合は、床に膝をついたままでも問題ありません。無理のない範囲で実践してください。

このほかにも、ダンベルなどのトレーニング機器を使用するケースもあります。また、ウォーキングやスイミング、ラジオ体操などの軽い有酸素運動を取り入れることも大切です。

栄養療法

筋肉をつくることと食事は密接に関わり合っています。よって運動するだけではなく、適切な食事で必要な栄養を摂取することも大切です。

筋肉の材料となるのはタンパク質ですが、年齢を重ねるとタンパク質から筋肉をつくる機能が低下していきます。よって、食事をする度にタンパク質を25~30gほど取り入れる必要があります。ただしタンパク質を摂取しすぎると、他の病気になるリスクが高まるので注意してください。

また、タンパク質をつくるためにはアミノ酸が必要ですが、必須アミノ酸は体内で作られないため食事で摂取しなければならないのです。必須アミノ酸を多く含む牛乳や卵などを、バランスよく食事に取り入れることが重要です。

薬物療法

適切な食事でもエネルギーを十分に作ることができない場合は、薬を服用して治療することもあります。また、ホルモンを補充することで骨格筋の量が増加したという例もあるため、男性ホルモンや成長ホルモンが投与されることもあります。

サプリでサルコペニアを予防

サルコペニアを予防するには、必要な栄養をしっかりと摂取して適度な運動をすることが大切です。ですが、食事だけでタンパク質を十分に摂取することが難しいと感じる方もいるでしょう。

そこで、サプリを補助的に服用するという方法もあります。特に、「HMB」という物質が含まれているサプリが効果的だといえます。HMBとは、必須アミノ酸の一種である「ロイシン」から合成されるものであり、筋肉を作ることを促してくれます。

実際に台湾やアメリカでHMBの服用と筋肉について実験が行われたところ、筋肉が増加したという結果もあるのです。厚生労働省も、HMBを抽出したサプリを服用することで、筋肉の合成や維持に効果が期待できるということを発表しています。

ただし、薬の飲み合わせなどに注意が必要な場合もあるので、普段から薬を服用している場合は医師によく確認してください。

さらに、筋肉の合成を促進するプロテインと組み合わせてもいいでしょう。手軽にタンパク質が摂取できるので、あまりお肉などをたくさん食べられない方にもおすすめです。近年はいろいろな味のプロテインが販売されているので、美味しく飲みやすいでしょう。

食事や運動、そしてサプリを組み合わせながら、徐々に筋肉量を増加させていきましょう。

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