年を重ねるにつれて衰える基礎代謝
私たちは特に何もしていなくても、心臓を始めとする内臓を動かしたり、息をしたり、体温を正常に保ったりするためにエネルギーを使っています。これを基礎代謝といいますが、基礎代謝は年齢とともに衰えてきます。基礎代謝量は女性の場合は15歳くらいがピークで、その後はどんどん下がっていくのです。
たとえば52kgの女性であれば、15歳の基礎代謝量は1316kcalですが、40代になると1128kcalに減ってしまいます。若い頃は基礎代謝量が多いですから、特に何もしなくても太りにくいのです。40代になっても若いときと同じように過ごしていれば、太るのは当然といえるでしょう。
基礎代謝と筋肉の関係
基礎代謝と筋肉は関係が深く、筋肉が増えればそこで使われるエネルギー量も増えますから基礎代謝量も上昇します。しかし残念ながら筋肉は、年齢とともに衰えてきます。基礎代謝量が減り、筋肉が衰えることによって痩せにくくなる。これが40代が痩せにくい主要因の1つです。
ですから、痩せようと思って極端な食事制限をするのは逆効果です。朝食や昼食を抜く、食事の代わりに野菜ジュースだけ飲む、夜はサラダしか食べないといった食生活では、栄養素が不足して筋肉が衰えてしまいます。筋肉が衰えると、その部分に脂肪が付きやすくなりますから、「食事を少なくしているのに痩せない」という結果になるのです。
極度の糖質制限はおすすめしません
痩せるためには、栄養バランスのとれた食事を3食欠かさずに取ることが重要です。それでも太るのが怖いという人は、ご飯の量をこれまでの半分に減らしましょう。「現代人の肥満は糖質の取り過ぎ」といわれています。このため、炭水化物などの糖分を極力控えている女性も多いことと思います。
しかし、極度の糖質制限はおすすめできません。炭水化物が不足すると、力が出ない、動くのがおっくう、物事に集中できないなど、体や脳が栄養不足に陥って、体の機能がうまく働かなくなるからです。
代謝も衰えますから、「つらい思いをして糖質制限をしても思ったほど痩せない」という事態に陥りやすいのです。糖質は体や脳の働きに欠かせない重要なエネルギー源ですから、糖質をカットしすぎるのは危険です。しかし、これまでよりも糖質を減らすことを意識し、タンパク質と食物繊維を多く取るようにすると痩せやすい体質へと変わっていきます。1食に食べるご飯の量は握りこぶし大が適量といわれています。女性の手なら120g程度でしょうか。お茶碗半分から8分目を心がけましょう。
タンバク質をとりましょう
そしてタンパク質は、筋肉を作る基となる栄養素です。筋肉の衰えを防ぐためにもしっかりとタンパク質をとりましょう。タンパク質が不足すると筋肉量が減るだけでなく、体力や代謝も衰えます。そうなると筋肉があった部分に脂肪が付き、太りやすくなります。また、肌や髪もタンパク質からできていますし、弾力のある肌に欠かせないコラーゲンもタンパク質から作られています。美しく痩せるためには、タンパク質は欠かせない栄養素なのです。
とはいえ肉など動物性タンパク質の取り過ぎは、カロリー過多でダイエットには向いていません。ダイエットを心がけるなら、お肉は1食につき手のひら大が適量です。ステーキなら手のひらの厚みと同じくらいの厚さのステーキを、指を除いた手の平に乗る量が適量です。
また肉だけ食べる、魚だけ食べるなど、1品目に偏らないようにしましょう。朝は納豆や卵、昼は魚、夜は肉や豆腐など、様々な種類の食品からタンパク質を取るのが理想的です。
更年期のホルモンバランスの乱れで起こる“更年期太り”
40代になると女性はそろそろ更年期を迎えます。更年期は閉経前後の時期のことをいい、この時期は女性ホルモンが減少してホルモンバランスが乱れるため、体に様々な不調を感じるようになります。また、「更年期太り」という言葉があるように、太りやすくなるのも特徴です。
女性ホルモンは卵巣で作られるホルモンで、赤ちゃんを産み・お腹で育てるための身体機能を維持する働きをしています。女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」があります。
女性ホルモン「エストロゲン」と「プロゲステロン」
これらのうちエストロゲンは、女性の美と健康に貢献してくれるホルモンです。エストロゲン女性らしい丸みを帯びた体型を作る、自律神経を安定させる、コラーゲンを作って美肌を保つ、肝臓や血管や骨、皮膚などの健康を保っつなど、女性にとってうれしい働きをしてくれるホルモンです。
プロゲステロンは子宮内膜の状態を整えるなど、妊娠を維持するための働きをします。お腹の赤ちゃんのための栄養を確保するために、体内に水分や栄養素を溜め込む、食欲を増進させる、体温を上げるといった働きもあります。
更年期になるとエストロゲンの分泌量が急速に減り、卵巣の働きが衰えます。エストロゲンの分泌量が減ると、コラーゲンの生成も不足して肌から弾力がなくなりますし、これまでエストロゲンが守ってくれていた内臓や血管、骨などもダメージを受けやすくなるのです。
そして、エストロゲンには内臓脂肪の蓄積を抑える働きもあります。更年期になるとエストロゲンが極端に少なくなりますから、内臓脂肪が溜まりやすい体質へと変わるのです。
もともとエストロゲンは、消費されなかったエネルギーを脂肪に合成して蓄える役割を持っています。このため、若い女性の脂肪は皮下脂肪が多く、太ももや下腹に脂肪がつく“洋ナシ型”の体型が一般的です。しかし、更年期になってエストロゲンが激減すると、内臓脂肪が溜まりやすくなり、男性のようにお腹がぽっこりと膨らんだ“リンゴ型”の体型になります。このような状況は見た目だけでなく、メタボリックシンドロームのリスクがグーンと高くなるので、健康上でも注意が必要です。
これまで女性の体をしっかりとガードしてくれていたエストロゲンが激減する40代以降は、体の不調が起きやすい時期です。健康面でも太り過ぎに気をつける必要があるのです。
エストロゲン量が減るとどうなる?
更年期になってエストロゲン量が減ってくると、体に様々なサインが現れ始めます。特に多いのがホットフラッシュと呼ばれる症状です。顔がほてる、のぼせる、汗が止まらない、心臓がドキドキするなど、自律神経がうまく働かなくて血管の調節ができず、このような症状が現れます。更年期の女性のおよそ60%がこの症状を感じているといわれており、最も特徴的なサインといえるでしょう。
このほか耳鳴り、めまい、無気力感、イライラ、不安感、不眠、鬱状態になるなどの症状もあり、これらも自律神経がうまく働かないことからくる症状だと考えられています。また、健康診断でLDLコレステロール(悪玉コレステロール)値が上昇していたら、これも1つのサインと考えてください。
更年期には有酸素運動がおすすめ
更年期になって太り始めたら、ウォーキングや水泳などの有酸素運動によるダイエットがおすすめです。
またストロゲンと同様の働きや抗酸化作用などがある成分「エクオール」を摂取するのもいいでしょう。エクオールは大豆を食べたときに、大豆に含まれる「イソフラボン」という成分が消化されて腸へと届き、菌によって作られます。
40代以降の女性には大豆が効果的であることは広く知られていますが、実は大豆を食べてもあまり効果が実感できないケースも多いのです。その理由は、大豆を食べて腸内でエクオールを作れる人、作れない人がいることです。
エクオールを作れる人と、作ない人を比べたところ、エクオールを作れない人の方が、更年期に現れる症状が重い人が多いことがわかりました。
エクオールと食事の関係
エクオールは腸内にいる細菌によって作られます。けれど日本人の2人に1人が、腸でエクオールを作り出してくれる菌を持っていないことが明らかにされています。腸内の細菌群は食事と深く関わっています。納豆を好んで食べる関東では、エクオールを作れる人の割合が高く、納豆を食べる習慣が少ない関西では低い傾向があります。
また、年代によってもこの割合は異なり、20代女性では作れる人の割合はわずか20%、これに対して50代女性は52%となっています。これは若い世代ほど、食生活の欧米化が進んでいるのが理由ではないかと推測されます。納豆を始めとする和食中心の食生活が、エクオールを体内に作る環境を生み出すといえるでしょう。
世界的に見ても、エクオールを作る割合はアジア地域で多く、欧米では少ない結果となっています。中国が54.9%、台湾が51.5%、日本が
50.0%ですが、これに対してヨーロッパは28.2%、アメリカは27.6%に留まっています。
エストロゲンの代わりをしてくれる重要な成分であるエクオール。「果たして自分の腸内で作られているのかどうか」と気になる人も多いのではないでしょうか。どうしても気になるようなら、尿検査で簡単に調べることができます。「ソイチェック」という、郵送で手軽に行える検査キットがありますから、利用してみてはいかがでしょうか。
エクオールのサプリメントも販売されています
また、エクオールのサプリメントも販売されています。大豆を食べても症状が改善しない場合は、サプリメントを服用する方法もおすすめです。エクオールを体内で作れない女性に、エクオールのサプリメントをある一定の期間服用してもらい、効き目を検証する調査を実施した報告によると、ホットフラッシュなどの更年期特有の症状が軽くなった人が多いことがわかりました。このほかにも体内でのコラーゲンの生成量が増えたことによるシワの改善、骨密度の減少を抑える、悪玉コレステロールを減少させる、糖代謝や血管機能の改善といった結果も現れています。
エクオールは体内で作れる人と、作れない人がいますが、たとえ作れていても十分な量が足りている人はごくわずかです。多くの女性がエクオール不足であるといえるでしょう。たとえ体内でエクオールを作れる人であっても、サプリメントを飲む価値はあるでしょう。
サプリメントに抵抗がある場合は、漢方薬で体質を改善するのもおすすめです。日本の漢方薬は植物由来の成分が多いですから、副作用の心配が少ないというメリットがあります。ただ、対処療法としてお薬ではなく、体質を改善して症状を和らげるので、時間をかけて飲み続けることが大切です。
大柴胡湯(だいさいことう)
更年期の時期のダイエットに効果的とされているものに、「大柴胡湯(だいさいことう)」があります。この漢方薬は、更年期に溜まりやすい脂肪を落とす作用があります。
食事から摂取した脂質は小腸で吸収された後、肝臓で分解されます。分解された成分は血液によってが全身に運ばれます。このため肝機能が低下すると脂質が分解できず、脂質がそのまま血液に送り込まれてしまい、肥満の原因になるのです。
大柴胡湯は更年期の内臓の衰えで、脂質の分解がうまくいかなくなるのを助けてくれる漢方薬です。食事から取った脂質を体内に吸収されにくくして、肝臓できちんと代謝し、体外へ速やかに排出してくれます。その結果、脂肪が減る、脂肪の燃焼効率を良くするといった効果が期待できます。
冷え性に注意!
もともと女性には冷え性の人が多いといわれますが、更年期になると自律神経の乱れによってさらに冷え性になりやすくなります。また、これまでエストロゲンに守られてきた内蔵機能が衰えてくるのも、冷え性になりやすい原因の1つです。手足やお腹は冷たいのに、頭や顔がほてる「冷えのぼせ」という症状に悩まされる女性も少なくありません。
体温は基礎代謝とも関係が深く、体温が1℃上がると、基礎代謝量は13~15%上昇します。40代女性の基礎代謝量の平均は1100kcalといわれていますが、体温が1℃上がれば143~165kcal増加し、1243~1265kcalになります。
143kcalは、体重55kgの人が30分間軽いジョギングをしたのと同じ消費量です。何もしなくても30分のジョギングと同等のダイエット効果が期待できるのは、うれしい効果ではないでしょうか。
気をつけたいのは、40代の温活は30代までの温活と方法が異なることです。30代までの冷え性の原因は体質もありますが、主にストレスが原因です。しかし40代以降は自律神経の乱れや内臓の衰えが冷えの原因となります。
このため若い頃は末端から冷えていたのが、40代以降になるとお腹の芯から冷えを感じることが多くなります。40代以降は腸を温めることを意識した温活が効果的です。温かい飲み物を飲むなど、腸を温めるよう心がけましょう。